紅白全曲空模様

歌手(グループ)名 曲名 コメント
BoA (2) 「DOUBLE」  ユンソナと区別がつかない人も多いと思われる。基本的に、母国語で歌わない歌手は好きではない。日本初のCCCDリリースという点でも、マイナス∞を付けたいところだ。曲の方は何度聴いても印象に残らない。歌もダンスも隙はないのに不思議な気がする。1曲目なので、ほとんどの出場者がステージに立って演奏を見ているが、年配の方々の手拍子はリズムに全然合わない。お尻フリフリをアップで写すカメラアングルはおやじっぽい。
w-inds. (2) 「Long Road」  あまりきれいに高音が出ているので、口パクかと思い口元を観察したが、カメラがメインヴォーカルのアップのときのリップシンクは合っているようだ。逆に、バックの2人の方が歌っていないように見えた。しかし歌を聴くと生のようではない。リップシンクが完璧なのか技術の進歩か。五木ひろし、森進一、北島三郎の3人の曲紹介は、あまりにも息が合わなくて、痛々しかった。五木と森の台詞がかぶったし、最後のかけ声で五木にかなり遅れて森が手を挙げたが、北島は手も挙げない。嫌ならやめればいいのに。
後藤真希 (初) 「オリビアを聴きながら」  ソロデビュー曲ならまだしも、モーニング娘。のオーディションで歌った曲とは不可思議。本人未録音の曲を歌った例は、33回(1982年)の榊原郁恵「なごり雪」、桜田淳子「セ−ラ−服と機関銃」や49回(1998年)の西田ひかる「That's DESNY Fantacy」くらい。いずれも歌う曲がない人の場合で、後藤真希はそこまでせっぱ詰まっていないだろう。せめて、尾崎亜美か杏里を応援で呼べば華があったのに、モーニング娘。が「ごっちん、がんばれ」と紹介し、バックで踊っても盛り上がらない。ヘソだしマイクロミニは曲調に合わない。次の愛内里菜に対抗するつもりだったのか。歌については可もなし不可もなし。悪く言えば特徴がない。紅白2004もハロプロ枠が3つのままなら、松浦、辻・加護プロジェクト、本家との争奪戦は必至だろう。
175R (初) 「空に唄えば」  どこかで聴いたことがあるメロディ。だから、メロディ・コアやメロディ・パンクと呼ばれるのである(大嘘)。ハードコア・パンクはメロディやリズムの変化を楽しむものではなかった。そこにキャッチーなメロディを持ち込んだのが、メロディ・コアの説明になる。タテノリの単調なリズムには変わりがないので、何曲も聴くと飽きてくるが、このような形で1曲聴く分には悪くない。はなわの「九州同郷人」を強調した曲紹介は、嘘っぽくて印象悪かった。工事中
愛内里菜 (初) 「FULL JUMP」  即席の大阪応援団のかけ声に気が散ったのか、高い位置で伴奏が聞こえにくかったのか、歌い出しがバックと合わない。声もよく出ていない。それが軽装になった途端、声が出るようになった。もし、衣装替えに気を取られて歌がおろそかになるようなら、「衣装対決参戦」はやめてほしい。とは言うものの、今回の紅白では一番楽しそうに歌っていて、聴いていて気持ちよかった。しかし、音楽とは関係ない話だが、中村玉緒の初出場者ツアーやエンディングでいいカメラ位置にいるし、RING SHOWにも登場した。彼女の一般的な知名度を考えると、初出場でこれだけの露出は多すぎる。逆に視聴者からは反感食らうのではないかと心配するくらいだ。GIZA srudioが、倉木麻衣を出す条件として、愛内里菜も出場(露出)させることをNHK側に要求した、という噂は否定するのが難しい。
EXILE (初) 「Choo Choo TRAIN」  ASAYAN出身というだけで、減俸持ち金半額にしたいところだが(意味不明)、やはりDA PUMPとのコンセプトの違いがわからない。歌って踊れるグループはジャニーズがいれば十分。歌だけ聴くと悪くないが、ダンス&コーラスが正式メンバーでいるのが納得いかない。後半、無意味にうまい子供ダンサーズが登場して、彼らの存在が埋もれてしまった演出はまずかった。
長山洋子 (10) 「じょんから女節」  ここから「日本の旅情コーナー」が始まる。長山洋子は、(1)本人は本当は演歌好きだったが、話題作りのために最初はアイドル系でデビューした。(2)アイドルとして先が見えたので、演歌に転向した。このどちらだろうか。どちらかと言えば(2)のような気がするが、演歌転向十周年を迎えたいま、過去をほじるのも失礼な気がするので、はっきり書くと、荻野目洋子や菊地桃子と同じ年のデビューだ。最近ヒットに恵まれなかったが、2003年に三味線を持って歌ったこの曲が小ヒット。しかし、これはどう見ても松村和子の二番煎じではないか? 松村和子のときは、ニュー演歌という感じの曲調だったが、長山洋子の方は古典派固持路線で物足りない。
山本譲二 (12) 「みちのくひとり旅」  本番前の番組紹介で「紅白はもう日本のほんとに最後の大きな祭りです。だからこれはもう盛り上げて、田舎のおじいちゃんおばあちゃんたちにほんとに喜んでもらいたいと、僕ら演歌歌手はそう思っています。はい祭りです。」と発言。北島三郎の2002年紅白批判で角が立ったのか、今度は弟子による控えめを装ったコメントを出させたようだ。山本譲二は決して嫌いな歌手ではないのだが、こういう傲慢なことを言われると、聞く気が失せる。いや、歌自体はいつもどおりで悪くはない。問題は12年前と今がまったく変わっていないことだろう。これは演歌歌手のほとんどに言えることだが。
水森かおり (初) 「鳥取砂丘」  初出場の喜びがあふれていて、うんうん良かったねと言いたくなる。その他大勢の演歌歌手の方々も、初期の曲を歌うなら、その頃の気持ちを思いだしてやってもらえばいいのに。何もしなくても、紅白出場者の半数を演歌歌手が占める時代はもう終わっている。水森かおりの歌は高音部の声が心地よく、これぞ演歌という気がする。釈由美子とキム・ヨンジャを足して2で割ったような容姿も、愛嬌があってグッド。しかし、演歌系では1つ抜けた実績を残した彼女も、ワンハーフなのは寂しい。やはり出場者が多すぎるのでは。ちなみに彼女は東京生まれの東京育ち、鳥取とは縁もゆかりもありません。
山川豊 (10) 「函館本線」  2002年は演歌枠削減で落選したが、今回復活しデビュー曲を歌う。演歌歌手にとって、紅白はやはり参加することに意義があるのか。4分間の歴史的敗北を受けて、NHKもそろそろ「国民的番組」から「大晦日にやる音楽番組の1つ」という認識で番組作りをしてほしい。紅白以外ではほとんどTVに姿を見せない演歌歌手の方々には、年間を通しての活躍を期待する。歌の方は、せっかく復活したのに何とも元気がなかった。1部に回されたのがショックだったのか、嬉しさのあまり緊張で声が出なかったのか。
香西かおり (12) 「無言坂」  ずっと、さだまさしの曲だと思っていた(嘘)。今年のヒット曲でもなく旅情編とも微妙に違う。今回この曲で登場する理由が見あたらない。山川豊同様補欠枠だったと推測する。
前川清 (13) 「東京砂漠」  これで「1部に回された演歌歌手救済コーナー」は終わり。このような継子扱いは紅白史上珍しい。出場者を減らして、1人あたりの持ち時間を増やした方がずっといい。前川清の歌はどこで聴いても印象は変わらない。声の衰えも見えないし眉間のしわも昔どおり。1つずらして、砂丘vs砂漠の対決がおもしろかったと思う。
モーニング娘。 (6) 「Go Girl〜恋のヴィクトリー〜」  生で歌えない歌手がテレビに出てもいいのだろうか。ジャニーズ系も、テレビで初めて新曲を披露するときは100%口パクだが、3回目くらいから生歌に変わる。モーニング娘。の場合は、全て口パクでかつリップシンクも下手なので、生じゃないのがすぐばれてしまう。さすがに見る方も飽きてきた。人気の3人が抜ける2004年は正念場になると思う。
Gackt (3) 「Last Song」  すっかりお茶の間タレント(バラエティ系)になってしまったが、元々は1992年に結成された「マリス・ミゼル」というビジュアル系グループのヴォーカル。そこから数えれば、もう十年選手になる(はず)。子供が蝋燭を持って通路で踊るという演出は不気味だったが、淡々と歌い上げるGacktは、ゴチャゴチャとうるさい紅白の中で一番落ち着きを感じた。2004年はファン以外にも歌手としての認識度を上げてもらいたい。
松浦亜弥 (3) 「ね〜え?」  後藤真希より2004年の出場は危ないかもしれない。70年代アイドル歌謡の形だけを受け継いだコンセプトは、そろそろメッキが剥がれてきた。素材としては、まだ賞味期限が残っていると思われるが、プロデューサーつんくのバブリーな感覚が残っている限り、明るい未来は見えてこないだろう。
布施明 (19) 「君は薔薇より美しい」  三谷枠と思われる。声の衰えよりも歌い方の古くささが気になった。昔はこの人のように「わたしはこんなにうまいでしょう?」的な歌唱力を強調した歌手が歌謡界にも多くいたが、今は演歌系を除いて流行らなくなった。化石のような存在に思える。ただ、紅白のステージとしては、どう見ても邪魔なダンサーとの絡みをいやな顔をせずにやっているのに好感が持てた。でも、2004年の出場はないだろう。
鳥羽一郎 (16) 「兄弟船」  この曲を歌うのは、36、43、46、51回に続いて5回目。3回に1回という頻度は、考えようによってはすごいが、他に歌うのはないのかと突っ込みを入れたくなる。新しい曲を歌うと「聞いたことがない」と言われ、昔のヒット曲をやると「古い曲ばっかり」と言われる、演歌歌手の袋小路な状況を端的に表していると思う。曲自体は絵に描いたような演歌で、様式美の世界は意外に心地よいものだったりするのだが、さすがにもう飽きた。
神野美伽 (2) 「浮雲ふたり」  この曲は今年そこそこヒットして、16年ぶりの出場となった(前回は1987年、38回)。でも、前年並の演歌枠なら入っていないだろう。こうひんぱんに枠が変わって、年によって出られたり出られなかったりするのは、出場者側からすると堪らない話だと思う。
堀内孝雄 (15) 「河」  元アリスのメンバーだと知っている人は年々減っていると思うが、その元になったのはロックキャンディーズである(これには谷村新司しか参加していないが)。堀内孝雄のCDが演歌のコーナーにあることに驚くことはない。最初から定見のない人たちだったのだ。その辺を考えると、十年一日のさだまさしは偉いのかもしれない。
石原詢子 (2) 「ふたり傘」  この人も補欠枠か。前回が2000年で、そのときも出場が訝しがられていた。で、NHK「コメディーお江戸でござる」のテーマを歌っていると。毎年の演歌枠の大きさで出場が決まると思われる。
伊藤多喜雄 (2) 「TAKIOのソーラン節」  ソーラン節が小中学校でブームって、YOSAKOIソーランのことだったのか。ヤンキーの祭りが小中学生にも浸透しているとしたら、全く恐ろしいことだ。熱演、熱演また熱演だったが、すっかり空回りして寒々としてステージだった。
綾戸智絵 (初) 「テネシーワルツ」  アルバムが大ヒット、と紹介されることがあるが、これは「ジャズチャート」での話で、売上は3万枚程度。日本ブレイク工業のCDの方が売れている。歌もピアノも高水準だが、この程度のセールスでもいいなら、もっとうまい歌手はいっぱいいる。しかし、どうにもこの人のキャラクターは好きになれない。
華原朋美w/コロッケ (5) 「ありがとね!」  この曲はもちろん、華原朋美名義で出した「PLEASURE」も、びっくりするくらい売れていない。売り上げだけで判断する気はないが、かつてのミリオンセラー歌手がいまではその1/100以下。彼女の一般的な知名度からすると、もはや「歌手」として認識されていない。この曲も馬飼野康二作曲の王道ポップスで、決して悪くないが、NHKのレギュラーが終わったら次の年に出るのは難しいだろう。
谷村新司 (16) 「いい日旅立ち・西へ」  鬼塚ちひろではなく谷村新司に歌わせた理由を開示しないと、視聴者は納得しない。元々「ジャパネスク」という胡散臭いコンセプトで作られた凡作だったのを、山口百恵に歌われることで、奇跡的に成功した例である。それをリメイクしたところで、原曲と大した差になるはずはない。しかし、アリス時代は出なかったのに、解散してからは堀内孝雄共々常連になっているのなぜだろうか。
ZONE (3) 「secret base 〜君がくれたもの〜」  現役中高生の女の子バンド、という売りがなくなったら特に特徴はない。先は見えているという判断でTAKAYOが脱退したのであれば、実に賢明な判断である。青春の思い出にするのもよし、しばらく「充電」してから、元ZONEとしてソロデビューするもよし。逆に残ったメンバーは動きが難しい。キーボードでも加えて実力派バンドを目指すか、いっそのこと解散するか。と、思っていたら補欠合格という予想外のオチになった。これでいいのか。
さだまさし (15) 「たいせつなひと」  なぜ映画の宣伝も兼ねて「精霊流し」を歌わないのかと思っていたら、この曲も『解夏』のテーマソングだった。こちらの方が興行収入が上がると踏んだのか、映画を見ると「精霊流し」の歌詞が大嘘なのがばれるのを恐れてのことかは知らない。ここでピアニストの倉田信雄氏に注目しよう。ビデオで見直すと、森山直太朗のバックでも弾いていたようだが、後ろ姿しか映らずスポットも当たっていなかったので、生のときは見落とした。次は吉田美奈子のバックでの登場を是非お願いします。
女子十二楽坊 (初) 錦織健 (2) 「自由そして荒城の月」  お好きにどうぞ。
安室奈美恵 (9) 「SO CRAZY」  1曲歌って踊っただけで、肩で息する状態になるのは精進が足りない。この人の土台は非常に脆弱で、一度坂道を転がり始めたら後戻りはできないと思っていたが、現在まさにその状態にある。彼女の音楽界での役割は終わってしまったのではないか。歌うロボットはもう求められていない。
森進一 (36) 「狼たちの遠吠え」  長渕剛がギターとコーラスで参加。吉田拓郎「襟裳岬」や大滝詠一「冬のリビエラ」という前例がある人だから、そう驚きはない。今回はこれまでで一番ロック的な仕上がりになったが、反面符割りが難しく歌いづらそうだ。4日の「のど自慢」(収録は紅白前だと思われる)でもこの曲を歌っていたが、歌詞は間違えなかったものの、サビはやはり不安定だった。しかし、こういう試みは彼1人ではなくて演歌業界全体で盛り上げていかないと、定着しないと思う。しかしいくつかの難点を差し引いても、彼の歌唱はとても良かった。白組1、2位を競う出来だったと思う。
森山直太朗 (初) 「さくら(独唱)」  一部に親の七光りでヒットしただけ。歌も下手。という評価があるが、これは明らかなやっかみである。森山良子の子供であることを世間が認識したのは、曲がかなりヒットして「森山直太朗って何者?」とマスコミが調べた結果だと思う。確かに、中島美嘉同様オールマイティなうまさではない。高音部の音程が怪しくなることもあるが、下手と言うほどではない。とは言え、歌声に柔軟性がなく単調に聞こえる欠点もある。2004年はヴォイストレーニングに励んでほしい。
浜崎あゆみ (5) 「No way to say」  紅白=>レコ大=>紅白=>カウントダウンと、大晦日は移動が大変だったと思う。この人にこそ、中継を入れてやれば良かったのに。歌手別の売上ではトップを維持しているが、前年に比べると明らかにセールスダウンしている。2004年レコ大は難しそうだ。楽曲の質が落ちているとか歌唱力が低下しているわけではないが、そろそろ飽きられ始めているのだろう。
ゆず (初) 「夏色など…」  倉木麻衣同様、2003年になってどうして出る気になったのか、疑問は残る。ラジオやCSでは生出演もしていたはずで、地上波TVはこれが最初で最後なのか、これを機にMステやHey!x3にも出ようという意図なのかは知らない。それはさておき、夏色ほか2曲は、歌唱、曲自体の出来、MC含めた演出いずれれも、今回の白組でベスト3に入る内容だったと思う。観客の反応もよく(ちと人多すぎのような気もしたが)、ミニコンサートを見ているようだった。
一青窈 (初) 「もらい泣き」  ここから曲紹介ミス3連発が始まる。その中でも、歌い出しにかぶったこの曲が一番まずかったと思う。これはイントロから歌の入りまでが短いのと、歌い出しのタイミングが難しいので、膳場アナを弁護する余地はある。だが、2部の4曲目で時間が押していたとも思えないので、ミスであることに変わりはない。歌の方はいつもどおりで悪くないし、言葉にならない皮膚感覚を音の響きとして表現する、歌詞の言葉遣いはとても新鮮だと思う。しかし世間的に見て、どうも「一発屋」のパターンにすっかりはまっているような気がする。
TOKIO (10) 「AMBITIOUS JAPAN!」  歌以外どこまで本物なのか、デビュー当時から疑問に思っていたが、未だによくわからない。少なくとも、男闘呼組のように他人の演奏ということはなさそうだ。目をつぶって聴いていると、ジャニーズということを忘れそうな、バンドサウンドが出ている。長瀬の歌も安定感があって安心して聴いていられる。
aiko (2) 「えりあし」  曲紹介と歌い出しにかなり間が空く。前回が3年前の2000年(51回)の出場だが、前2回なぜ落選したかはよくわからない。デビュー当時から名前のとおりの愛らしい容姿には好感度高いのだが、男性から見た可愛い女性を演じているような歌詞世界に嘘っぽさを感じる。歌も演奏も悪くないのでそこが惜しい。
はなわ (初) テツandトモ (初) 「佐賀県なんでだろう〜スペシャル合体バージョン〜」  はなわはベース・パクだったのが発覚した。着ぐるみを脱ぐのに両手を使っているのに、ベースの音が出ていた。歌詞も元曲そのままで物足りない。それに比べて、テツandトモは紅白バージョンの新ネタ中心の構成で、よく考えられていた。ただ、番組全般の露出は、はなわの方が多かったので、出番の方で花を贈った可能性もある。終盤の画面暗転は、カメラがステージで入り乱れる芸人さんにぶつかったのか。彼ららしいと思った反面、あれだけ画面がゴチャゴチャしては、誰が主役なのかわからない。北島三郎あたりが眉をひそめて見ている姿が浮かんでくる。
Every Little Thing (7) 「またあした」  持田香織の声の衰えは、ファンでなくてもわかるくらいだ。25歳くらいでそんなに消耗するものだろうか。ソウルシンガーのように十代からシャウトし続けたわけでもないし、二十代後半から三十代前半は歌手として一番脂が乗っている時期だと思う。基本的に歌唱力を要求されるような曲調ではないので、そう気にはならないが、今後どういう展開を考えているのか、他人事ながら心配だ。曲が完全に終わっていないのに、白組司会が次の紹介を始めたのは、リハ不足かそれとも時間が押していたのか。
CHEMISTRY (3) 「YOUR NAME NEVER GONE」  ASAYAN出身というだけで(以下略)。男性R&Bデュオというアイデアは今でも新鮮だし、歌は相変わらず美しい。セールスが落ち始めているのは、楽曲の完成度が高くても同じようなものが続けば飽きられるということだろう。R&Bはなかなか差別化が難しいジャンルである。宇多田ヒカルや倉木麻衣も路線変更してしまったことからもわかる。2004年の彼らには音楽面での冒険を望みたい。
島谷ひとみ (2) 「元気を出して」  薬師丸ひろ子の透明度100%声の原曲からすると、何枚かベールが掛かったような気がするが、今回のカバー大会の中では一番違和感なく聞けた。2年連続他人の曲を歌っていることはある。しかし、そろそろオリジナル曲で勝負してほしい。
美川憲一 (20) 「さそり座の女2003」  そろそろ衣装対決にはピリオドが打たれそうな予感がある。そうなると存在価値がなくなるので、コロッケの物まねで声だけ出演になると予想。
小林幸子 (25) 「孔雀」  売りの衣装替えが失敗してはコメントするところがない。
平井堅 (3) 「見上げてごらん夜の星を」  今回の紅白のコンセプトを知っていたわけではないだろうが、2年連続のカバー曲。坂本九との疑似デュエットという企画はおもしろいが、坂本九の唱法が古くさく聞こえるのは残念。平井堅の歌はいつもどおりで安心して聴けるが、歌いぶりがどの曲も似通っているような気がして、初期の新鮮さはなくなった。この曲はMEGUMIの方がアレンジが新しい。
藤あや子 (12) 「曼珠沙華」  憧れの人を山口百恵という歌手が、何故演歌をやっているのか、という突っ込みはさておき。山口百恵がご存命なら44歳、年齢差は誤差範囲で、ほぼ同世代と言える。原曲を知らない人は幸せ、知っている人は不幸せ。山口百恵がどれだけすごい歌手だったか、阿木・宇崎・萩田(編曲)トリオの曲作りの完成度がいかに高かったか、再確認しただけの結果だった。山口百恵のカバーをする人が、過去20数年ほとんどいないのは何故か、よく考えよう。
中島美嘉 (2) 「雪の華」  一生懸命歌っているのには好感が持てるものの、ちょっと肩に力が入りすぎて音程のふらつきが大きい。レコード大賞のときの方が安定していた。マイクの使い方の問題か発声の問題か、息が掛かりすぎて聞き苦しい箇所があった。今にも倒れそうな前傾姿勢になるところで、最近、何故か石川さゆりの津軽海峡冬景色を思い出すようになった。難点を挙げれば挙げられるが、すっかり年齢階層別に音楽の好みが分離している今、若年から中高齢まで幅広く支持を受けている数少ない歌手である。彼女の動きには今後とも注目していく。
ゴスペラーズ (3) 「新大阪」  ともかくグループ名を何とかしてほしい。ゴスペルの精神をまったく知らない人たちが、音楽の形だけをなぞっているのは見苦しい。しかし、ゴスペルを歌える歌手が日本に何人いるか考えると暗くなるので、以下コメント省略。
坂本冬美 (15) 「あばれ太鼓」  芸能誌に「涙を抑えて歌う姿が感動的だった」と書かれそうなところだが、出場15回の歌手がわずか1年間の休養から復帰しただけで感涙にむせぶほど、紅白の舞台は特別なものなのだろうか。復帰祝いなら、デビュー曲ではなく新曲を歌わせるべきでなかったか。2004年は細野さんが動けるうちにHISの再結成を。
細川たかし (29) 「浪花節だよ人生は」  さっぱり、すっきり、あっさり。この人の厚かましい歌いぶりには辟易していたが、まったく違和感なく聴けた。理由は余裕。「うそ」「北酒場」「矢切の渡し」、曲の出来はさておき、歌手としての知名度は演歌系で随一である。今回「原点回帰」として歌われる、デビュー曲やヒット曲しか知られていない者が多いのと比べると、実に恵まれていると言える。いや、ヒット曲の数だけならもっと多い者もいるが、さすがにあまり昔になると記憶が薄れてくる。
森山良子 (8) BEGIN (2) 夏川りみ (2) 「涙そうそう」  3組同時に歌うと、森山良子の声が聞こえなくなるのは、声量の差だと思われる。夏川りみはうまい反面、歌声が平板に流れがちなので、こういう形でサポートするのは有効と思う。
倉木麻衣 (初) 「Stay by my side」  やはりワンハーフだとあっと言う間に終わってしまう。これは単に縮めただけでなく、終わりそうで終わらないエンディングは、紅白特別バージョンだった。この辺に、彼女やスタッフの真面目さを感じた。原曲のR&Bテイストはすっかり拭い去れて、ディープなリズムトラックも軽くなった。デビュー当時の「R&Bの歌姫」というキャッチに嘘っぽさを感じていたので、アレンジ変更に違和感はない。だが、わざわざ2ndシングルを選んだのかは謎である。GIZA側は今年の曲を希望しただろうし、彼女自身も最近の曲の方が歌いやすかったと思う。本人はこの曲が一番好き、という話は聞いたことがあるが、3年以上もそれを凌ぐ曲がないのは、褒められたことではないだろう。セットがしょぼかったのが気になったが、いつもどおりの丁寧な歌いぶりで、歌詞を間違えたことを除けば好印象だった。
長渕剛 (2) 「しあわせになろうよ」  視聴率ではしあわせになれなかったが、曲は予想外に良かった。この人は妙な自信を持たず原点に戻ればまだまだいける。彼の良さは、70年代フォークの硬質な部分を形の上で受け継いだところにある。それが、シングルの連続ヒットやドラマの成功に惑わされて、中身が評価されたと思いこんだのが良くなかった。その過信が前回の17分独占放送につながったと思う。この曲のように普通に歌えば、歌のうまさや声の良さも再確認できる。
和田アキ子 (27) 「古い日記2003 KOUHAKU Remix」  「日本のR&Bの先駆者」「最近は若い人にも支持されている」という曲紹介には呆然となった。NHKまでご機嫌取りをしなくてもいいものを。今年出した「トゥモロー」の売り上げを知っての狼藉か。いや、ピチカートファイブの小西康陽が彼女の再録アルバムをプロデュースしていたりはするが、小西氏が「若い人」とはとても言えない。R&B風の歌謡曲を歌っていただけで、何故先駆者とまで褒められるのか。華原朋美同様、世間の認識はもはや歌手ではない。
五木ひろし (33) 「逢えて…横浜」  新曲である(2003年8月27日発売)。懐メロではなく新曲で勝負したところに、1ポイントあげたいところだが、視聴率は2部最低という結果になった。いや、男性の演歌系では氷川きよしに続くセールスを挙げているので、演歌ファンの認知度は低くないと思う。視聴率の低さは残念だ。非演歌の若手歌手を馬鹿にしたような言動もないし、ちょっと好きになってきた。
石川さゆり (26) 「能登半島」  「津軽海峡冬景色」と「天城越え」ばかりでは飽きられるので、この曲が選ばれたのか。あ、ゴジラ松井の出身地が石川県だからか。声が年々丸くなっているので、初期の曲はどうも鋭さに欠ける。今の声に合わせた新曲を作ってあげてほしい。
北島三郎 (40) 「風雪ながれ旅」  視聴率対決ではお笑い勢の圧勝。
川中美幸 (16) 「おんなの一生〜汗の花〜」  歌い始めるまでがお辞儀の嵐。はっきりとわかるだけでも7回は頭を下げていた。ほんといい人そのもので、うかつにもファンになってしまいそうになったが、歌が始まると現実に引き戻される。こんな泣きの演歌はどうにも苦手だ。
氷川きよし (4) 「白雲の城」  新曲を出してそれが世間に認識されているのは、演歌系では氷川きよしくらいである。そう言う意味では、ほとんど唯一の現役演歌歌手と言える。2004年はレコード大賞と紅白大トリの2冠達成が順当なところだろう。淡々としているが自信に満ちた歌声には、若くして風格を感じる。問題があるとすれば、いまはどんな曲を出しても売れてしまう状態なので、逆に焦点が絞りきれないことか。終盤のしゃがむ振りを知らなかったのか、一瞬カメラがスモークだけを写していたのは減点1。
天童よしみ (8) 「美しい昔」  この選曲は勇み足だろう。ベトナム歌謡の名曲と言っても一般にはほとんど知名度がない。天童よしみ自身がシングルカットしたのも11月に入ってからなので、曲前の簡単な紹介では、彼女のファン以外ピンと来なかっただろう。しかし、曲の良さと歌声はとてもよかった。演歌よりポップス路線の方が向くのではないか。
SMAP (12) 「世界に一つだけの花」  基本的にジャニーズ系は好きだ。ひいき目に見ても失敗した少年忍者(でも紅白には出ている)さえ悪い印象は持たない。いつの時代も男性アイドルの王道を行く姿勢は立派だと思う。モーニング娘。など足元にも及ばない、志の高さを感じる。ジャニーズの歌に対するスタンスは、「最初は口パクでも、まず踊れればいい。しばらくすると踊りながら歌えるようになる。」だったと記憶している。SMAPの名前もそれに由来すると思う。それが、J-Friendsだったかのチャリティーを始めたのには違和感があった。今回、メンバーが一言ずつメッセージを言ってから歌い始めたのにも、同様の居心地悪さを感じた。「言葉(歌詞)」のみに頼ったメッセージは70年代フォークの方法論である。ジャニーズのアイドルは、歌いながら格好いいダンスを決めることでファンに夢を与える。それが最高のメッセージになっている。身体の切れ悪く歌にも難があるSMAPには、まずそちらの方から精進をお願いしたい。